自分の腸内細菌についての考え方が改まった1冊「失われてゆく、我々の内なる細菌」を紹介します。
腸内細菌は食べものの分解に関わっているくらいは知っていたんですが、この本を読んでもっといろいろなことにも関わっていて、さらにそれが失われることの危険性がよく分かりました。
失われてゆく、我々の内なる細菌 マーティン・J・ブレイザー みすず書房 2015-07-02
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ピロリ菌は悪玉なのか?
ピロリ菌は胃に住みつく腸内細菌。
胃炎の原因だと証明、さらに胃ガンとの関わりもあるとされ、この研究者たちは2005年のノーベル賞を取りました。
胃ガンを防げるかもしれないので、それ以来、ピロリ菌の除菌が行われるようになりました。
ところがピロリ菌を除去すると、今度は胃酸が増えてしまい、逆流性食道炎さらには食道がんが増えてしまう結果になりました。
他にもピロリ菌は、アレルギーなどにも関わっている可能性が出てきました。
悪者だと思われていたピロリ菌が、実は人体にとってプラスになることもしていたんです。
腸内細菌の多様性こそが重要
ここからさらに話は進んで、腸内細菌全体の話になります。
さまざまな研究から、腸内細菌がアレルギーや肥満、糖尿病、ぜんそくなど、ものすごくたくさんの病気や体質にプラスの作用をしていることが分かってきました。
さまざまな環境に対応するには、腸内細菌の多様性を保つことがものすごく大事。
ところが、この腸内細菌の多様性は抗生物質の使用ですぐに失われてしまいます。
それは病気で処方されるものを使用したときはもちろん、家畜のエサに含まれる微量の抗生物質を食べ続けたときにも起こってしまいます。
緊急事態をのぞいて抗生物質を予防的に使用するのはやめた方がいいと強く感じました。
子どもが風邪を引いて病院に連れていくと、かなりの頻度で抗生物質を処方されますが、本当に必要なものかどうかよく考えた方がいいですね。
まとめ
人間の性質は遺伝子で決まるところが多いと思っていましたが、実はそれをはるかに上回るレベルで腸内細菌に左右されているのかもしれません。
実験の話もあって少し読みにくいかもしれませんが、腸内細菌がわたしたちの体にとっていかに重要かがよくわかります。
ぜひ読んでもらいたい1冊です。
失われてゆく、我々の内なる細菌 マーティン・J・ブレイザー みすず書房 2015-07-02
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